誰かがいなくなって、それでも日常は回っ
ていきます。同じような季節、同じような空
模様、どれだけ同じような日に見えても、同
じ日なんてものは、還ってきません。あの時
優しくしてくれた友達も、今日には僕に呆れ
て話さえ聞いてくれないかも知れない。
あれもこれも、僕たちは見ないふりをして
過ごしていたのかも知れない。それに気付く
のは、ひょっとしたら無くした時なのかも知
れません。無くした時、初めて愛しくなって
、気付けばどこにでも、そんな風景が有り触
れているのに気付く。パッチリと花を咲かせ
たアサガオの微笑みも、そんな姿に憧れて頑
張って開こうとする蕾も、澄んだ空に浮かぶ
雲も、夕焼けも。飛べない羽根で羽ばたいた
、短い命を全うしたあの子スズメは、初めて
僕に、愛を教えてくれました。形のない大切
なもの、本当は言葉になんてできはしません
。成功した命、失敗した命、そんなものはど
こにも存在しません。
イエスは十字架に磔にされて死に、その時
に流れた血は罪人たちに奇跡を起こしたと言
います。残酷な運命の十字架とともに生きた
あの子もまた、僕にとっての小さな奇跡でし
た。あの子のいない明日の幸せに気付けたの
は、命を掛けてあの子が教えてくれたからだ
ったと思う。けれど今も、出会った命が死ん
で行くのを見るのは怖いです。だから泣いて
、時々一人になって、何時かは打ち明け事の
ように話せるようになって、苦しみの運命さ
え抱き締めていけるのだと思います。
何を伝えたいのか、言葉を尽くしてもそれ
は出来ないと思う。それでも明日には、例え
悲しくて死にたいような昨日があったとして
も、幸せがもっとそばに寄り添ってくれるこ
とを願っています。それはさながら、十字架
の上で死したイエスが蘇り、昇天したように
。そんな願いが、この作品をご覧になってい
るあなたに少しでも伝われば、それだけで嬉
しいです。