2016年参院選を振り返る

 結果としてとても残念だと言わざるを得ません。

近年の選挙は力を持った与党によるワンサイドゲームに成り果てていて、

口封じや騙し討ちも辞さない非常にアンフェアなものになっています。

既に改憲へと本格的に着手する姿勢を明らかにし始めましたが、

それが果たして、国民の命を守ることに繋がるのでしょうか。

 

 バングラデシュでは日本人を含む外国人が殺害される悲劇が起こりましたが、

日本人が標的にされたことと、この改憲へと向かう姿勢は決して無関係ではないはずです。

 

 例えば、フィリピンでのNGO活動を見てみましょう。

「ミンダオナ子ども図書館」というNGO活動がありまして、そこではムスリムや

キリスト教徒、マノボ先住民たちが身を寄せ合って生活し、学ぶ空間があります。

しかし、集団的自衛権の行使に関わる協議が進められていくにつれて、そこでの

活動は危険にさらされることとなりました。

ミンダオナ子ども図書館の主宰である中村哲さんは次のように仰りました。

 

 アフガニスタンでは「憲法9条があってよかったな」と、

日々思いながら暮らしています。

身の危険を感じずに済むからです。

アフガンの人たちは米国が嫌いです。

過去に侵略された英国も嫌いだし、白人系というだけで誘拐や攻撃の対象になる。

ドイツ人が、私は米国人じゃないといってもだめです。

でも、日本は特別な存在です。

敗戦から復興した経緯が似ていると思われているのか、

反政府側からも狙われることがありません。

 

(中略)9条の威力とは、そういうものだと思います。

日本は軍事協力に消極的だった結果として、世界に敵をつくってこなかった。

アフガンでは敵意ではなく、恩人としての意識だけが残った。

それは日本のブランド力、歴史的遺産とも言うべきでしょう。

だから、集団的自衛権を使えるようにすることは、ひと言で言えば危険です。

近隣国の敵意が増して緊張状態をつくり出すだけで、防衛になっていない。

戦争以外の手段で国を守るのが戦後の理想だったのに、戦争ができた

昔に戻す動きに見えてしまいます。

中日新聞(2014年5月3日)

 

 これは概念的な話ではなく、紛れもない現場の声です。

武力行使によって平和が脅かされることの、一つの証拠です。

武力行使の合憲化によるPKO活動とは、まことに皮肉な言葉です。

これらに関しては非常に複雑な事柄が絡み合っているので、単純な見解を下すことが

できませんので、後日少しずつ確かめていきたいと思います。

 

 選挙から少し話が遠ざかったので戻します。

やはり今回も諦めや負けず嫌いな気持ちから、とても消極的な気分に

陥ったところが見えました。

そもそも選挙は長い対話のプロセスであって、その場でパパッと何かを

変えるためのものではないと思いますし、もちろん勝ち負けでもありません。

 

今回に限らず選挙も結局は対話であり対話のきっかけでもありますから、

選挙が終われば全ての取り決めが終わるわけではないのではないでしょうか。

そういう所ですごく民主主義を履き違えていると思います。

消費者マインドみたいなものが未だに残っていますし、諦めを前提にしている

時点でもう既に対話が成り立っていません。

 

 根本的に政治を決めるのは選挙だけではなく、当然ながら個々人の意思決定です。

その中で対話をしながら「公の意思」を決めていくわけですし、その対話の場所は

必ずしも選挙だけではないはずです。

例えばデモに参加してみたり、様々な立場で働く人たちの講演会を聴きに行ったり、

日頃の会話の中でそのようなことを話してみたり、そういう積み重ねが必要になります。

もちろん、楽なものではないと思います。

その対話を妨げているものには、あるカテゴリーに対する偏見や固定観念があります

そして何よりも、無関心が大きな障害です。

それらを克服するためには真実を追い求めるしかない。

真実に基づいて、僕たちにある良心に従ってよりよいものを選んでいく

べきではないでしょうか。

 

 どんなに頑張っても何も変わらないのはつらいことです。

ですが、「仕方がない」と言って諦め続けるのはそれ以上につらいことです。

その「仕方がない」を一歩進めて「少しはマシになれば良いけど」の気持ちで

取り組んで、何時かは「絶対に良くしてやる!!」に変わっていけば心強いです。

もちろん、そのためには努力が必要ですが、その努力は決して消費されません。

消費されないからこそ、育てることができます。

今からでも遅くはありません、明日が変わらなくても何時かが変われば

大往生だと、僕は思っています。

 

 最後に、今回の選挙もやはり芳しくない結果になってしまいましたが、

絶望するにはまだまだ早いです。

どんな形であれ野党の共闘が実現したのは心強いことですし、

改憲や原発といった危険な政策に反対する日本共産党のような勢力が少しずつ

力を伸ばしているわけなので、寧ろこれからだと思います。

それと余談ですが、今朝の新聞を呼んで考えたのはこんな事だったりします(笑)

 

「ふ~ん改憲勢力が四割も支持されているわけかぁ、でも投票率が

 たったの五割程度だったから、全体で見たらたった二割しか支持されていないんだなぁ

 

 楽観も良いことですけど、どうせなら現実的な見方で笑っていられたら良いですよね!!