作品解説

-YHWH:Your Name / アンサングと消えた足跡-

 

2017年2月14日


 クリスマス作品とありながら、完成し
たのが2月も半ばと毎度遅刻も甚だしい
限りです・・。ともあれ、今年も無事に
完成できて一安心、改めて本作を振り返
りたいと思います。


 "YHWH"とは、旧約聖書における神の
名前を表すもので、例えば「ヤハウェ」
と読む場合があります。しかし本来母音
がないため、この呼び方は正しいとは言
えず、神の名前を僕たちの言語で発音す
ることができません。このように神の名
前が表記されるのは、神は僕たち人類を
超越した存在であり、その存在を僕たち
に示しながらもその全容を的確に捉える
ことができない、つまり合理的に捉えら
れる類似性を持ちながらも完全に異なり
、深く遠い境界によって隔てられた存在
である、というからです。


 神という言葉から誤解や争いが生まれ
る恐れがあるため、題名に使うのを避け
たかったのですが、言葉にできなくても
確かに感じるものという本作の題材を損
ねないためにも、このような題名とさせ
て頂きました。僕はキリスト教徒ではあ

りませんが、恒例のクリスマス作品のた
めの良い引用の一つとしてこのような選
択があったというだけです。


 「ユア・ネーム」と一応読みますが、
これは題名の一例に過ぎません。ですか
ら、個々人が好む名前で本作を呼んで頂
きたいのです。未知数、絶対者、大切な
人の名前、どのようなものでも構いませ
ん。できれば一番大切にしたいものの名
前を付けて頂けたら嬉しいです。


 去年は共通した題材で様々な作品が生
まれましたが、本作にも過去作からの引
用があります。中央の十字架からは前作
"-One Summer' s Day / 餞の唄-" で描
か れた夕日が浮かび上がっています。


 遠く隔てた、たどり着けない懐かしい
記憶、それは昨日でも今日でもなく、生
まれた時から僕たちが持っているものな
のかも知れません。それゆえにその記憶
の名前を呼ぶことが出来ない、例えよう
にも伝わらない、とても繊細な証がある
ようです。

 遠く隔てた、たどり着けない懐かしい
記憶、それは昨日でも今日でもなく、生
まれた時から僕たちが持っているものな
のかも知れません。それゆえにその記憶
の名前を呼ぶことが出来ない、例えよう
にも伝わらない、とても繊細な証がある
ようです。


 人はこの世から去っても、なお生き続
けることができるのか、永遠を夢見るこ
とは、単なるまやかしなのか。考えれば
考えるほど、全てを投げ出したくなるほ
ど悲しくなります。


 それでも人は帰らない日々を語る時、
懐かしい温もりの中で微笑みを浮かべま
す。在りし人の名前を思い出す時、一緒
に歩いた風景を一人眺める時、その時の
気持ちは言葉には言い表せません。


 何が大切なのか、それを何と呼べば良
いのか。理屈っぽい人にも分かるように
伝えられるのなら。こんな風に考えてし
まうことも増えました。けれど、それを
伝えるための理屈も、名前も、僕は言い

表すことができません。ただ言い表せな
いだけで、その在り処を否定できない。
それ故に、題名の読めない作品を描いて
まで表現しようと思いましたが、ひょっ
としたら何も伝わらないのかも知れませ
ん。




 ただただ、分からないことばかりです
。絶望や不安、希望もその先にある。溢
れる涙をそのままに、微笑みを浮かべた
ガラサがきっと、この作品の全てを物語
っているのでしょう。