作品解説

-Grains of Life / ゴルゴタへの誓い-

 

2018年11月19日



 「愛」「祈り」というテーマを持つガラサ
にスポットを当てた作品で、現在のスタンダ
ードとも言える仕上がりになりました。絵を
描き続ける中でガラサは僕にとって特に思い
入れの強い人物で、数あるキャラクターの中
で一番強い想いを初めに宿したのが彼女でし
た。初めの存在感は今も変わらず、大切な制
作には必ず彼女が寄り添ってくれます。


 本作はヨハネによる福音書の12章・24
節『一粒の麦』を題材に、一命を賭した献身
的な愛というメッセージが込められています。
例え棘の道が待ち受けていても、自らを差し
出す勇気があれば麦畑のように多くを実らせ
る。死をもって成される「殉教」でなくても、
友情や恋愛・職業や小さな色んな選択の中に
も、僕たちは一粒の麦を持っていると僕は信
じています。


 元々本作は今から1年以上前、大切な人た
ちへの祝福を込めて制作する予定でしたが、
状況の大きな変化で制作が中断されてから長
らく引き出しの中で眠っていました。熟考よ
りも衝動が原動力だった本作はとても粗削り
で、熱が冷めるのも早かったのだと思います。


 それから1年が経ち、偶然途中描きの線画
を発掘した時には時限爆弾的に「今描きたい」
という衝動に火をが付き、ごく短い期間で完
成に至りました。宛先は他でもない、自分に
向けた作品に成り代わりながら


 自分のことを忘れて、ただ誰かのために描
きたい、応援したい。そんな想いを込めた作
品は行き場を失い、皮肉にも僕自身に返って
きました。運命とは不思議なもの。結局僕は
誰にも何も伝えられない、誰かの心を揺り動
かすことなんてどだい無理なんだと、自信を
無くしてしまいました。


 けれど今思うと作品は備忘録で、そこに込
められた道のりや想いの方が本体で、作品が
どう仕上がるかよりも僕自身がどう生きるか、
その方がずっと大きな問題だったかも知れな
い。伝わらないと諦めながら、それでも描く
のを辞められない。果てのない旅路に描く足
跡が意味を成す日はいつか。


 ただ一言だけ、伝えたかった。愛している。
そのためなら命さえ、差し出せるくらいに。