作品解説

-Fiat Lux / デイ・バイ・デイ-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年1月28日


 本作は私の創作人生初となる長編作品『―
ロゴス―命の名前。』の足掛かりとして制作
され、物語の主人公アインのありのままの日
常を描いた作品です。


 アインはリベラントという小さな町で暮ら
す青年で、ポストマンの仕事を通して町の人
々を見守ります。彼は要領が悪く不器用なが
ら、しかし何事にもひたむきで温厚な人柄か
ら町の人々から愛されています。


 長編創作という初めての試みを前に、私は
今までの創作活動を振り返ることになりまし
た。グッズ製作をしたり二次創作にも挑戦し
たりしましたが、「信仰」とともに描くとい
う根本への立ち返りについて再び考えさせら
れました。

 願いとはとても人間的で単純な営み。学問
や様々な鍛錬、単純な問いかけ、言語非言語
を問わず何かを欲しがり得ようとすること全
てが願いであると、私は学生時代に教わりま
した。


 しかし私たち現代人は簡単にそれを忘れて

しまう生き物だと、身をもって思い知らされ
ました。私たちは常に願い、無償に多くを与
えられながらもその恩義や掛け替えのなさを
容易く忘れてしまいます。何度信じても裏切
られる、何度誓っても約束を守れない、そん
な他人や自分にウンザリして願うことを辞め、
思考を止めて惰性に流れる日々を、私は暫く
受け入れていました。平日は職場と家を往復
して、休日は適当に遊んで過ごして、殆ど絵
を描かなくなった日々はただ無味乾燥で、生
きながら死んでいくようでした。


 人間として生きたい。例えどんな明日が来
ようとも、それを希望と呼びたい。平凡な願
いに名前を付けて、描く中でアインや仲間た
ちと出会い向き合う日々がどれほど満たされ
ていて、私が私でいられたのか、離れて気付
くことが沢山ありました。


 絵を描く時。仕事をする時、知人と他愛も
ない話をする時、ぼんやり何かを考える時、
どんな時でも私たちは願わすにはいられない
生き物。絶望だけが人生なら、とっくに私た
ちは生きていられないのですから。

 繰り返しの日常に誰かとの出会いを願う私
がいる。ともに笑い合う日々を願う私がいる。
変われない自分を変えたい私がいる。変わら
ずに保ちたい私がいる。何度約束を破っても
何度人から裏切られても、何度でも誓い何度
でも信じる私がいる。


 例え本当が嘘に変わっても、この命が燃え
尽きるまで何度でも。